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経営(ヒト・モノ・カネ)に関して定量的な分析を発信する 株式会社トランスのブログ

「従業員モチベーション」と「業績・退職」は関係するのか?

今回は、企業の実データをもとに
従業員のモチベーションと業績は関係するのか?
という課題について考えてみます。

 

「従業員のモチベーション」は重視すべき?

 

従業員のモチベーションは高めるべきでしょうか?

高いほうがよいと思いますが、目的次第かとは思います。

モチベーションと業績の関係性を定量的に確認することはできますか?

仮定は必要ですが、定量的に分析してみましょう。

 

近年、「エンゲージメント」「従業員満足(Employee Satisfaction)」「従業員ロイヤルティ(eNPS)」などの重要性が指摘されています。

 

 一方、「従業員のモチベーションは気にするべきではない」という主張もみられます。

 

いずれの主張も、実験結果があったり、論理的な説明があるため、「どちらの主張が正しいの?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。

 

そこで今回は、企業の大きな目的である「業績を高める」という観点を軸に
「従業員のモチベーション」と「業績」や「退職」は関係するのか?
という課題を考えてみます。

 

※「組織の未来はエンゲージメントで決まる」の本では、

  • エンゲージメント:主体的・意欲的に取り組んでいる状態(自発的な貢献意欲)
  • 従業員満足度:職場環境や給与、福利厚生などへの満足度
  • モチベーション:行動を起こすための動機
  • ロイヤルティ:組織に対する帰属意識、忠誠心

とされており、「エンゲージメント」と他の3つの言葉は区別されています。 「何を計測しており」「本当に成果に結びつくのか」は、それぞれの診断ごとに分析する必要性を感じています。

 

 すべての従業員の「業績」を数値化する

 「モチベーション」(エンゲージメント)の問題で難しいと感じるのは
それぞれの「業績(成果)」をどのように計測(数値化)するか?
という点です。

 

「業績(成果)」を数値化できる業務であればわかりやすいですが、数値化できない仕事も多いです。

 

そのため、過去の研究事例では、数値化して比較しやすい仕事(例えば「コールセンターの受電数」など)が、「モチベーション」と「業績(成果)」の関係性を分析するために行われてきました。

一方、上記の分析が「汎用的な結論を導けるか?」という点については、検討の余地があると感じています。

 

そこで今回は1つの仮説として複雑な仕事を数値化するために
・チームの業績 = マネージャーの業績評価
という仮定をおいてみます。

※マネージャーの評価は業績(成果)の割合を反映させている会社も多いのである程度、確からしい仮定かなと考えています。

 

「従業員のモチベーション」と「業績」の関係性

 先ほどの仮定に基づき
・チームの「従業員のモチベーション」 = モチベーション点数のチーム平均値
・チームの「業績」= マネージャーの業績評価
という2つの指標の関係性を分析してみます。

 

以下のグラフは、ある企業の102のチーム(マネージャー)に対し、「チームのモチベーションの平均点数」と「マネージャーの平均業績評価」を示したものです。

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結果、
モチベーション平均点数が70以上のチームは、チーム業績が高い可能性がある
(平均点数が70未満のチームは、統計的に優位なチーム業績の差はみられない)
ということがわかりました。

 

「平均点数70以上」は、今回の指標ではかなり低い出現率になるため、上記の結果は
モチベーションが著しく高ければ、業績向上につながる
(逆に、モチベーションがある程度の高さにとどまると、業績貢献まではつながらない)
可能性があることが示唆されました。

 

ただし、今回のチームはほぼすべてがモチベーション点数が全ての会社の平均以上だったため
モチベーションが低いと、業績が下がる可能性がある
点については、検証ができていません。

 

「従業員のモチベーション」と「退職」の関係性

 次に、「業績」の中の「費用」という観点から、「モチベーション」と「退職」の関係性について分析してみます。
別記事の通り「1人が退職すると年収の相当の利益損失」の可能性があるためです。

 

先ほどと同様に、「チームのモチベーションの平均点数」と「退職率(全体平均を1とした時の値)」の関係性をグラフにしました。

 

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結論として、
チームのモチベーションと退職率には、統計的に優位な関係性はない
(モチベーションが低いと退職が増える可能性はあるかもしれない)
という結果になりました。

 

まとめ

 今回、1つの企業のみのデータですが、
・モチベーションが著しく高ければ、業績向上につながる
(逆に、モチベーションがある程度の高さだと、業績貢献まではつながらない)
・チームのモチベーションの高さと、退職率はあまり関係性がない
”可能性がある”ことがわかりました。
(※ただし、「マネージャーの評価」が「チームの業績」に比例すると仮定しており、モチベーションが平均以下のケースは未検証)

 

逆に「従業員のモチベーションは気にするべきではない」という主張は、
一定範囲内のモチベーションの場合、モチベーションの高低と業績に関係性は少ない
という側面をとらえている可能性もあるのかなとも感じております。

 

みなさまの会社では、「モチベーション」(エンゲージメント)をどのように考えられていますか?マネジメントの分析については、まだまだ明らかになっていないことも多いと感じています。ぜひご意見いただけますと幸いです。

 

 

(参考文献)

State of The Global Workplace GALLUP社(「ストレングスファインダー」などを提供)
「エンゲージメントの高いチームは、収益性や生産性が高まる」という結果。
※対象企業は「22 organizations」「45 countries」「1.2M employees」となっており、グローバル展開している大手企業が主な対象になっていると考えられる。

「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果 株式会社リンクアンドモチベーション
「エンゲージメントスコアが高い企業は、翌年の売上/利益の伸びが大きくなる」という結果。

Great Place To Work 研究レポート
「働きがいのある会社(ベストカンパニー)は、売上の対前年伸び率が高い」
「ベストカンパニー10社は、日経平均より投資対リターンの割合が高い」という結果
※「業績」と「働きがい」の因果関係はわからない(「成長」している企業が「働きがい」が高い可能性もある)と記事中に記載あり。 

 

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。

勤怠データから「退職しそうな人」を予測できるか?

今回は、企業の実データをもとに
勤怠データから退職しそうな人を予測できるか?
という課題について考えてみます。

 ※関連記事は「退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ)」よりご覧ください。

 

「勤怠データ」から「退職しそうな人」を予測できるか?

 

従業員が「退職」してしまうと、企業にとっては大きな利益損失につながります。
前回記事の通り「1人の退職で年収相当の利益を損失している」可能性があります。

 

そこで、「退職しそうな人」を事前に予測し、認識のズレを補正したり、サポートを手厚くすることで、退職を防ぐ試みがいろいろと行われています。

 

今回はその中でも、「従業員の勤怠データ」から「退職しそうな人」を予測できるか分析してみます。

 

「勤怠データ」における「退職者」の特徴分析

 まずは、「退職者」について「勤怠データ」に特徴があるか?を確認してみます。以下のグラフは、「退職」直前までの、退職者の「総労働時間の平均」のデータです。

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今回の企業においては、
退職者」は「退職5か月前」に過去の平均総労働時間の最低値(13か月前)を下回る
ことがわかります。
※「1~2か月前」になると、有給消化なども含んだ結果になります。

 

そのため、
「退職者」は退職前に労働時間が減る傾向がある
ということがいえます。

 

「勤怠データ」における「退職者」を予測できる?

 次に、「勤怠データ」について「機械学習」を行い、「退職の予測」ができるか確認してみます。


予測するためのデータとして、
「労働時間」「休み回数」「早退回数」「遅刻回数」「休み明け遅刻回数」「出社時間」「退社時間」
を使用しました。
※ただし、「退職前1~3か月」のデータは、退職がすでに確定してしまっており、打ち手につなげられない可能性があるため、「退職前4か月以前」のデータのみを使用します。

 

約300人に対して、機械学習(AI)を行い、予測結果と実際の結果を以下の表にまとめました。(以降の数字は合計300人となるように丸めています)

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上記では、
・「退職」と「在職」の正解率は88%((1人+262人)/300人)
ですが、
・実際に退職した36人中1人しか、退職を予測できていない
結果となっており、未来予測としてはほとんど意味がない結果となりました。

 

次に、退職を予測できる人数が増えるように、機械学習の内容を調整して、再度分析をしてみます。

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結果、
・退職者37人中8人の予測はできた
一方で、
・「退職と予測」した65人中、「実際に退職」した人は8人
しかおらず、実際の利用を考えると、ほぼ使えない結果になってしまいました。

 

結論として、
(今回の分析では)「勤怠データ」から「退職」を予測できない
という結果になりました。

 

まとめ

 今回、
「退職者」の「勤怠データ」には傾向がある
 ※「退職前に労働時間が減少する」など
ただし、その特徴だけでは(今回の分析では)未来予測はできない
という結論になりました。

 

データ分析をしていると「統計的に傾向(=有意差)がある」場合でも、「未来予測ができない」ことも多いです。

※例えば、1000人の会社で退職率10%(100人)の場合、退職者100人の20%(20人)、在職者900人の10%(90人)が【特徴X】である場合、統計的に【退職者は特徴Xを持っている傾向】がありますが、【特徴Xを持つ110人(20人+90人)の中から、退職者(20人)を見つけることは難しい】となります。

 

もちろん「特徴」はあるため、機械学習アルゴリズムを工夫することで、未来予測できる可能性はゼロではないと考えています。

 

もし「勤怠データ」から「退職の未来予測」でよい結果が得られている方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見を頂けますと嬉しく思います。

 

※以下の記事では、「退職の未来予測」が一定できた分析内容を紹介しています。

 

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。

機械学習(AI)を使うと「退職」はどの程度予測できるのか?

今回は実際の企業データを分析した結果から
「入社後の情報(評価)から退職を予測できるか?」
という課題について考えてみます。

 ※関連記事は「退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ)」よりご覧ください。

 

退職(離職)は予測できるか?

 

従業員の離職を予想する方法はありますか?

データがあれば、傾向をつかむことは可能です。

既存の評価データだけでも、分析できますか?

はい、どの程度未来予測ができるか見てみましょう。

 

前回記事では、「1人が退職すると年収相当の利益損失」の可能性があることがわかりました。特に「ハイパフォーマー」や「将来の幹部候補」には、退職してほしくないと考える企業は多いかと思います。

 

そこで今回は、
・入社後の情報(評価)から「退職」をどの程度予測できるか?
また
・退職しやすい人はどのような特徴がみられるか?
について、実際のデータを使って分析をしていきます。

 

「退職」を機械学習(AI)で予測する

 まずは「退職した人」について、機械学習(AI)を用いて予測を行ってみます。

 

今回は、比較的多くの企業でデータとして残っていると考えられる
・勤続年数、評価、等級、異動回数、給与金額
のみを利用して分析してみます。
(「性別」「年齢」などの属性情報は、あまり「退職」の予測に寄与しないことを別途確認しています。)

 

今回は、
・「2012年~2015年」のデータを、予測モデルを作る「学習データ」
・「2016年~2017年」のデータを、「テストデータ」(以下の検証結果で利用)
としています。

 

機械学習はプログラムが頑張ってしまうので、さっそく結果です。

 

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※該当企業の2016年~2017年に在籍していた約1000人(人数は丸めています)に対する分析結果です。

 

結果、
正解率は「83%((31人+795人)/1000人)
「退職」と予測し、実際に「退職」だった人は、「46%」(31人/67人)
となりました。
※「正解率」は「退職と予測し、実際に退職した人」と「在職と予測し、実際に在職の人」の合計の割合です。

 

今回の企業では当該期間の退職率は「約17%」だったため、
機械学習を用いることで2.7倍(46%/17%)の確率で退職を予測できる
ことがわかりました。

 

今回の退職予測に意味はあるか?

 今回の結果の解釈としては、
統計的な予測モデルとしては、改善の余地がある
一方、実利用を想定すると、ある程度有効に使える可能性がある
という結論だと考えています。

 

統計的な予測モデルの観点では、実際の退職者「169人」中「31人」(約2割)しか退職を予測できていないため、予測精度はまだまだ改善の余地があると感じます。
※ただし、退職については様々な要因があるため、1つの予測モデルだけでは限界があり、複数の要因を検証できる予測モデルが必要とも感じています。

 

一方、実利用を考えると、機械学習(AI)が予測した「67人」(うち31人退職)の「退職リスクが高い人」に対し、サポートを手厚くする施策を実施することで、全体に対する施策よりも効果的な施策を実行できる可能性があります。

 

予測結果を具体的にどのように施策に落とし込めるかが、予測がどれだけ意味があるかを決めるポイントかなと考えています。

 

退職しやすい人の特徴とは?

 実際に機械学習に取り組まれている方の悩みとして
機械学習の結果だから!という理由では現場が動いてくれない」
という話を伺うことがあります。

そこで今回は、複雑な予測モデルの要素を分解し、「退職者」の特徴を抽出しています。
※具体的には、予測モデルから影響度の高い部分を仮説として抜き出しています。

 

今回の企業の場合、「等級」と「給与上昇の回数」が、退職予測に比較的強い影響を与えていることがわかったため、「等級」ごとに「給与上昇回数」と退職率の関係性をまとめてみました。

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結果、
・「若手」では、「給与上昇回数が多い」ほうが退職率が高い
 ※特に、上昇回数が0.75~1回/年の場合、退職率は約2倍になる
 ※ただし、「最も給与上昇回数が高い層」(1.25回/年以上)は、退職率は低い
・「中堅以上」では、「給与上昇回数が少ない」ほうが退職率が高い
という結果になりました。

 

上記を解釈すると
「若手」は、一定の評価をされている人(トップではない2番手)が、退職しやすい
傾向があるといえます。
この結果は、個人的な感覚ともあう部分があると感じます。
※この層の若手は将来の組織を支える大切な人財の場合が多く、期待値ギャップを埋めるなど、優先的にサポートができるとよいのかなと感じます。

 

もちろん「機械学習による予測モデル」のほうが「精度」は高いですが、現場を巻き込み「成果を生む」ことを重視すると、上記のような単純集計を用いたほうが、成果に近づけるのかもしれません。

 

まとめ

 今回、入社後の情報(評価)から「退職を予測できるか」という課題に対し
・正解率は「83%
・「退職」と予測し、実際に「退職」だった人は、「46%(31人/67人)
機械学習を用いることで約3倍の確率で退職を予測できる
という結果を得ることができました。

 

また、退職しやすい人の特徴として
「若手」で、一定の評価(ただしトップではない)をされている場合
※中堅以上ではあまり評価されていない場合
があることがデータから示唆されていることを確認しました。

 

みなさまの会社では、退職リスクに対して、どのような取り組みをされていますか?ぜひご意見をいただけますと幸いです。

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。

離職率(退職率)の算出方法3パターンを解説

今回は、
 離職率が1%改善すると、どれだけ利益貢献するか?
の記事の補足として、「離職率(退職率)の算出方法」 についてまとめます。

※関連記事は「退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ) 」よりご覧ください。

 

一言で「離職率」といっても、いろいろな考え方がありますので、自社の離職率を業界平均や他企業と比べる場合には、注意する必要がありそうです。 

 

 A.離職率厚生労働省が定義)

 厚生労働省「雇用動向調査」の定義によると、離職率

常用労働者数に対する離職者の割合をいい、次式により算出している。

離職率 = 離職者数 / 1月1日現在の常用労働者数 × 100 (%)

となっています。

企業に置き換えると「1月1日」ではなく、期初にする企業も多いので、この離職率

A.離職率 = 離職者数 / (期初1日目の)従業員数

と言い換えることができるかと思います。

 

ただし、この定義の離職率は比較的多くの企業で使われているかと思いますが、
「該当期内に入社した人の離職率は計測できない」
という問題があります。

例えば、4月~翌年3月の離職率を考える際、4月2日以降に入社し3月までに離職した人は、離職者数に含まれない 計算式になっています。

ベンチャー企業や短期契約の社員が多いような、人数の増減が激しい企業だと、本質を見誤る可能性がある指標となっています。

 

B.入社直後離職率(+離職率(対象期間1日目を除く))

Aの離職率の問題を改善するために、以下の離職率を追加で設定している企業もあります。

B-1.入社直後離職率 =(対象期間内に入職した)離職者数 /(対象期間内の)入職者数

この場合、4月1日から翌年3月31日までに、100人を採用して、そのうち15人が翌年3月31日までにやめてしまったとすると、

  • 対象期間内(4月1日~翌年3月31日)の 入職者数 : 100人
  • 対象期間内(4月1日~翌年3月31日)の 離職者数 : 15人
  • 入社直後離職率 = 15% ( = 15人 / 100人)

 と計算することができます。

 

ただし、B-1.入社後離職率を、A.離職率と併用しようとすると

AとB-1の離職率の両方に、「期初1日目に入職(入社)した人が含まれる」

という問題が起こってしまいます。

そのため、B-1.入社後離職率を使う場合には、A.離職率から「期初1日目に入職した人を除く」必要があり、

B-1.入社直後離職率 =(対象期間に入職の)離職者数 /(対象期間の)入職者数
B-2.既存社員離職率 = (対象期間前日に在職の)離職者数 /(対象期間前日の)従業員数

とい2つの離職率を使っているようです。

 

C.1年(3年)以内離職率

AやBの指標は、「特定の期間内に”離職”した割合」を主に算出する指標でした。一方で、新卒入社のように「特定の期間に”入職”した人が、その後離職する割合」も「離職率」の1つの指標とされています。

 

Aの離職率を定義している厚生労働省は「新規学卒者の離職状況」の調査において、同じ名前の「離職率」を以下のようにも定義しています。

(3年目)離職率 = 4月~3年後3月までに離職した者 / 3月~6月に新規学卒として雇用保険に加入した者

 

この定義はよく企業でも「新卒の離職率」として使われていることを目にします。最近では「3年」以内だけでなく、「1年」以内の離職率を見ている企業も多いように感じます。

簡易化すると、この定義は

C.1年(3年)以内離職率 = (対象期間に入職の)1年(3年)以内の離職者数 / (対象期間の)入職者数

と定義できるます。 

 

まとめ

離職率(退職率の定義をまとめると)

 

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の4つ(3パターン)が主な定義としてあることがわかりました。

 

これに加えて、「契約形態(正社員、契約社員 など)」や「新卒・中途」の区分、さらに最近では通年採用をしている企業も増えていたりと、どんどん退職率の計算がややこしくなってきています。

 

また入社後の評価によって「高評価者の離職率」をKPIとしている企業もいるようです。

 

もしみなさまの会社で上記以外の退職率の考え方をしていらっしゃる方がいれば、ぜひご連絡をいただけますと大変嬉しく思います。

 

 

※上記すべての退職率をワンクリックで自動計算してくれるサービス「TRANS.HR」を提供しています。(退職率自動計算機能など無料でご利用いただけます。)

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。

離職率が1%改善すると、どれだけ利益貢献するか?

HR部門のKPIとして、
離職率(退職率)」
を追っている会社も多いかなと感じます。

 

最近は特に「新卒の離職率が上がっている(=定着しない)」や「ベンチャー企業で大量に離職者が出ている!」という話を耳にする機会もしばしばあります。

 

一方で、
・「離職率」はどのくらい下げたほうがよいの?(どの程度が適正値?)
・パフォーマンスごとに「離職」の考え方は変えるべき?
などの点については、あまり定量的な議論を見たことがない気がします。(不勉強で恐縮ですが。)

 

そこで今回は、
「1人離職するとどのくらい利益が変動するのか?」
について数字の面から考察し、
離職率」を改善することで、どれだけ「利益貢献」できるのか?
という答えを導いてみたいと思います。

(計算や仮定が間違えていたら、ご指摘いただけますと幸いです。)

 

※関連記事は「退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ) 」よりご覧ください。

 

 

0.そもそも「離職率」の定義とは?

一言で「離職率」といっても、会社によっていろいろな定義があるようです。私が聞いたことがある離職率の定義を並べてみます。(厚生労働省でも同じ「離職率」いう言葉で、AとCそれぞれに近い2つの離職率を使用しています。)

※詳細は「離職率(退職率)の算出方法3パターンを解説 」をご参考ください。

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いろいろな離職率があると、業界平均と比較しにくいため、KPI設定が難しい部分はありますが、一旦いろいろな定義があるという前提で、議論を先に進めます。

 

※上記すべての退職率をワンクリックで自動計算してくれるサービス「TRANS.HR」を提供しています。(退職率自動計算機能など無料でご利用いただけます。)

 

1.1人が退職(離職)すると、どれだけコストがかかる?

まず1人が退職すると、どれだけコストがかかるのかを計算してみます。いろいろな計算方法がありますが、年収480万円の人が退職し、退職者分の人を採用した場合の一例を示します。

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色々な仮定をおいていますが、ざっくり1人当たり年収相当のコストがかかっているといえそうです。

ダイヤモンド社記事では、入職者の教育コストの除いて、年収500万円で267万円と試算されており、上記計算では、入職者教育コストを198万円と試算しているので、267万円+198万円=475万円と考えるとほぼ同等の数値です。

※KeyPlayers高野さんの記事では、「人事採用人件費」が上記計算の約2倍で計算されています。そのため、コストはもう少し上振れて計算する必要があるかもしれません。

 

2.ローパフォーマーはどの程度企業に損失を与えるか?

退職には一定のコストが発生する一方、
「ローパフォーマー」の退職は仕方ないと考えている
というお話も耳にすることがあります。

そのため次に、「パフォーマンスの違いと利益の関係性」について計算してみます。

 

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上記のように簡単には計算できないことは理解したうえで、あくまで理論計算では
「ローパフォーマーの人は、年間480万円(年収相当)の利益損失を与えている」
”可能性がある”ことがわかりました。

※コストは福利厚生費や固定費を含めていないので、もっと高いかと思います。

 

3.「離職率が1%改善」すると、どれだけ「利益貢献」する?

次に、仮に
「100人の企業で退職率が1%改善(=年間に1人)した場合の利益貢献」
について考えてみます。

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※人件費率は業界ごとにかなり違うので、あくまで目安です。

 

非常に大雑把な結論ですが、

・退職人数が1人減ると、最大816万円の利益創出
・退職率が1%改善すると、営業利益率が最大0.5%改善

する可能性があることがわかりました。

 

4.「離職率」の適性値とは?

最後に、適正な「離職率」について考えてみます。

 

上記の計算上、「ローパフォーマー」の場合、
「ローパフォーマーが退職し、新しい人を採用した場合のコスト」

「ローパフォーマーが1年間で与える損失」
の金額が近しい可能性があることがわかりました。

 

個別には、より精緻に検討する必要がありますが、今回の過程の上では
・ローパフォーマーは1年以内にパフォーマンス改善できるか
が1つの利益における目安になりえることが、計算上は示唆されました。

逆に、
ハイパフォーマー、ミドルパフォーマーが退職すると利益率が下がる
こともわかります。

 

そのため、「適切な退職率」を「利益」の観点から考えると
適切な退職率は、(1年以内にパフォーマンスが改善しない)ローパフォーマーの割合
という可能性があると考えられます。

 

※ちなみに、ローパフォーマーが1年で退職すると「退職コスト:480万円」+「利益損失:480万円」で、合計約960万円/人(年収の2倍)の利益損失があることがわかります。
パフォーマンスを上げさせることも重要ですが、採用時点て入社後のパフォーマンスを見極める精度を高めることも重要かもしれません。

 

 

5.まとめ

今回、
ハイパフォーマーの退職率が1%改善すると、営業利益率が0.5%改善
する可能性があることを示しました。

 

仮定が多すぎるため、数字的な意味合いは弱いですが、個人的には思ったよりも改善できる利益額は大きいのかなと感じました。


また
適切な退職率は、(1年以内に改善しない)ローパフォーマーの割合
・ローパフォーマーを採用して1年で退職すると
年収の2倍相当の利益損失
という可能性がある示唆も得られました。

 

実務に携わられている皆様は、退職率についてどのようにお考えですか?「離職率改善」の取り組みを行っていらっしゃる方がいましたら、ぜひご意見をいただけますと幸いです。

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。

退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ)

離職率に関する色々な議論を見るのですが、退職予測は意味があるのでしょうか?

会社の考え方によりますが、機会損失を抑える一助にはなると思います。

退職を80%予測できると聞いたことがあるのですが本当ですか?

「80%」だけでは、良い場合も悪い場合もあります。どれだけ事業に貢献する予測ができるか確認してみましょう。

 

人事において、「離職率(退職率)」はわかりやすい指標の1つであるため、「離職率低減」を目標においている企業も多いかもしれません。

※会社によっては「血の入れ替わりは必要」「会社フェーズによって必要な人材は変わるので人材は入れ替わる」という考え方もあると理解しています。ただし「高評価者(ハイパフォーマー)の退職を防ぎたい」という点は、どの会社も共通しているかなと考えています。

 

直近では、様々なHRデータの利活用により、退職を予測する取り組みも増えてきています。

 

そこで今回のシリーズでは

・退職に関するデータのまとめ
・実際に複数の企業で行った退職予測の結果とその効果

について、報告します。

 

1人が「退職」した場合の「利益損失金額」(理論分析)

※参考:離職率(退職率)の算出方法3パターンを解説

 

 “入社後評価”から「退職」を予測(実データ分析)

 

“勤怠データ”から「退職」を予測(実データ分析)

 

 “入社前”に「退職」を予測(実データ分析)

 

(補足)「従業員モチベーション」と「業績・退職」は関係するのか?

 

(補足) 退職予測「80%」はどれだけ意味があるのか?(理論分析)

※参考:未来予測における予測精度のいろいろな算出方法

 

 

適性検査結果から「マネージャー」の評価を予測できるか?

今回は、企業の実データをもとに
マネージャー(管理職)のパフォーマンスをどのくらい予想できるか?
という課題について考えてみます。

※関連記事は「適性検査の未来予測は再現性があるのか?(まとめ)」よりご覧ください。

 

 

「適性検査結果」で「入社後評価」は予測できるのか?

 

マネージャーの評価は個人の特性から予測できるものでしょうか?

「チームとの関係性」の影響もありますが、「個人の特性」からも一定予測はできると思います。

「管理職向けの適性検査」の結果があるのですが使えますか?

適性検査とマネージャーの評価の関係性を分析してみましょう。

 

 関連記事では、“全社員”に対し「適性検査の結果から評価予測を行い、5~7割を予測できる」ことがわかりました。

一方、業務が複雑なマネージャー(管理職)の場合、様々な要素の中で、個人の特質はどのくらいパフォーマンスに影響をあたえているのでしょうか?

今回は
「マネージャーの評価を適性検査×AI(機械学習)で予測できるか?」
ということを考えてみます。

 

マネージャー評価を機械学習で予測する

関連記事と同様に、マネージャーの評価を「高評価」「普通評価」「低評価」に分類し、この評価に対し、管理職向け適性検査「NMAT」のデータを機械学習で分析することで、予測を行います。

 

約300人のマネージャー(マネージャー候補を含む)に対し、評価の予測実際の結果をまとめたのが以下の表です。※予測には「職種」のデータも加えています。

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※例えば、「機械学習の予測」が「高評価」で、「実際」も「高評価」だった人は「23%」いると読み解きます。

 

結果、
全体の「正解率」は57%(23%+19%+15%)
となりました。
※「正解率」は、予測と実際が一致(例えば、予測が「高評価」で実際も「低評価」など)した人の割合


結論として
マネージャー(管理職)についても、適性検査で評価を予測できる
可能性があるということができる結果になりました。

 

高評価(ハイパフォーマー)のマネージャーが持つ性質

あくまで今回の対象企業の場合になりますが、高評価のマネージャーと、低評価のマネージャーの適性検査結果を比較してみます。

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 全体平均が高いの指標(青丸)をみると
・「概念的理解」「論理的思考」「基礎総合能力」
の3つが高く、この3つの能力が今回企業のマネージャーに求められる能力(または備えている能力)であることがわかります。
※この3つは「性格」ではなく「能力」の項目になります。

 

一方、「高評価」と「低評価」の“差”赤丸)に注目すると
・「外向」「統率」「変革」「承認」
4つが「高評価者」の特徴的な性質があることがわかります

 

この結果は
マネージャー(管理職)として評価が高くなりやすい個人の特性を理解できる
とともに
マネージャー(管理職)として、成果を出すために能力を高めるべきポイント
の理解にもつなげられるかと感じています。

 

まとめ

今回、
・マネージャー(管理職)についても、適性検査で評価の約6割を予測できる
・マネージャー(管理職)においても、「高評価者」には特徴的な資質がある
ことがわかりました。

 

マネージャー(管理職)の業務は、対人コミュニケーションを含めた複雑な内容であり、単純にデータから予測することは難しいと考えていますが、既存のデータを活用するだけでも、ある程度の傾向をつかみ、改善できる可能性があるかなと感じました。

 

みなさまはマネージャー(管理職)の評価について、どのように考え、昇進などの施策につなげられていますか?ぜひご意見をいただけますと幸いです。



※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。