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経営(ヒト・モノ・カネ)に関して定量的な分析を発信する 株式会社トランスのブログ

ハイパフォーマー分析をしても、よい人材は採用できない??

 今回は企業の実データを基に
「なぜ高評価者の特徴分析をしても、よい人を採用できないことが多いのか?」
という課題について考えてみます。

 

ハイパフォーマー(高評価者)分析のやり方を間違えている??

 

ハイパフォーマーの分析をしたのですが、採用がうまくいきません。

単なる統計的な分析では、高評価者は採用できないかもしれません。

ハイパフォーマーを採用したいのですがどうすればよいでしょう?

「高評価者を採用」するための、分析を行ってみましょう。

 

人事の方に伺うと
「高評価者の基準」を分析して作成したのに、実際に採用すると高評価者が増えない
というお話をいただくことも多いです。

今回は、高評価者分析の流れを解説しながら、陥りがちなミスと、その解決策を考えてみます。

 

「適性検査」を例に「ハイパフォーマー分析」をしてみる 

今回は100名の企業のデータ(評価×適性検査(SPI))を見ていきます。当該の企業では、以下のような評価の分布になっており、「高評価」(=ハイパフォーマー)を採用するための「適性検査」の基準を見ていきます。

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ステップ1:会社のカルチャーに合う人を採用する

「カルチャーフィット」という言葉が注目を集めているように、"従業員のパフォーマンス"と”会社のカルチャー”は、関係性がある場合が多いです。

そこでまずは、会社全体のカルチャーを見るために、全社員における「適性検査の平均値」を見てみます。

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この会社では、「活動意欲が高く」「慎重性が低い」という特徴があることがわかります。

なるほど!では全社のカルチャーにあった「活動意欲が高く」「慎重性が低い」人を採用しましょう!

と、なってしまうと、高評価者が採用できない基準になってしまう可能性があります。

 

ここで重要な点が、「作成した基準を検証する」ことです。

 

次に、この2つの基準(活動意欲が高い・慎重性が低い)を使用したときに、過去の従業員がどの程度当てはまるかを集計してみます。

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結果、この2つの基準では、
・基準を満たす(=採用する)従業員のうち、36%が高評価
 ※残りの64%は普通/低評価者
・実際の高評価の従業員26人のうち42%(11人)が該当
 ※高評価者の残り58%(15人)該当しない(=採用しそびれる)
結果になることがわかります。

 

このように検証してみると、この基準を使っても、ハイパフォーマー(高評価者)を採用しにくい可能性が高いと感じられるのではないでしょうか?

 

ステップ2:会社の「高評価者」の特徴に合う人を採用する

次に「高評価者」を採用するために、「高評価者の特徴」に注目してみます。

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グラフより、高評価者の特徴は
慎重性が低い」「達成意欲が高い」「従順性が低い」「自己尊重性が高い
ということがわかりました。

再度、この高評価者の特徴4つで、既存社員を”検証”してみます。

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高評価者の特徴4つの基準を使用すると
・基準を満たす(=採用する)従業員のうち、56%が高評価
・一方、実際の高評価の従業員26人のうち、81%(21人)は採用できない
という結果になりました。

この基準は、全体に占める高評価者の割合は上がったもの、採用できる人が少なくなる(=採用難易度があがる)という結果になってしまいました。

これは実は(?)
「高評価者」の平均を超える「高評価者」は少ない
※高評価者には、いろいろなタイプがいるため
ことが原因と考えられます。

以下は、高評価者個人ごとの適性検査結果を示したグラフですが、4つの基準を満たしている高評価者7人中1人(Fさん)のみであることがわかります。

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ステップ3:会社の「高評価者」の特徴を基準を甘くして採用する

ステップ2では、高評価者を採用しようとしても、実際の高評価者の81%を採用しそびれてしまうことがわかりました。

そこで、より多くの採用者を出せるよう、ステップ2の「高評価者の平均以上」という基準を、ステップ3では「特徴4つを持っている(=偏差値50以上)」という基準に変えてみます。

 

先ほどの高評価者の特徴4つ(慎重性・達成意欲・従順性・自己尊重性)が偏差値50以上の場合に、どの程度高評価者を採用できるのか、既存社員で検証した結果が以下です。

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結果としては、
・実際の高評価の従業員26人のうち、73%(19人)を採用できる
・一方、基準を満たす(=採用する)従業員のうち、61%は普通・低評価
となり、3つのステップの中では、一番実用に近いと感じるものの、
採用する人の6割は高評価では”ない” 可能性がある基準となりました。

 

高評価者の採用基準は「要素の組み合わせ」に着目

ここまでの分析の問題点として、
1つずつの特徴をそれぞれ抽出してから、組み合わせている
という点があります。

 

最後に、「組み合わせ」を考慮して、抽出した4つの基準(「敏感性が低い」「社会的内向性が高い」「身体的活動性が高い」「懐疑的志向性が高い」)を使って、検証した結果を以下に示します。

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結果、組み合わせを考慮して、基準を作成すると
・基準を満たす(=採用する)従業員のうち、84%が高評価
・実際の高評価の従業員26人のうち、62%(16人)を採用できる
 ※残りの38%も別の組み合わせ基準で採用可能
となることがわかりました。

 

この組み合わせを考慮する分析は、もちろん1つずつ手作業でも行えますが、「機械学習」(AI)を使うと比較的簡単に行うことができます。

※「機械学習」を行った結果は以下の記事に詳細を記載しています。

 

まとめ

今回、
・会社全体や高評価者の単純な特徴だけでは、高評価者は採用できない
 ※高評価者の特徴をすべて持つ高評価者は少ない
特徴の組み合わせを考慮した採用基準を作成できると高評価者の割合が向上
 ※「機械学習」(AI)を用いることで、組み合わせを考慮しやすい
する可能性があることがわかりました。

 

HRデータは検証が難しいことも多く、つい「既存社員で基準の検証」するステップを飛ばしてしまいがちですが、しっかりと検証を行うことで、よりよい採用基準が作れるようになると感じております。

 

みなさまは、採用基準の作成にどのような工夫をされていますか?ぜひご意見いただけますと幸いです。

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。