TRANS.Blog

経営(ヒト・モノ・カネ)に関して定量的な分析を発信する 株式会社トランスのブログ

「従業員モチベーション」と「業績・退職」は関係するのか?

今回は、企業の実データをもとに
従業員のモチベーションと業績は関係するのか?
という課題について考えてみます。

 

「従業員のモチベーション」は重視すべき?

 

従業員のモチベーションは高めるべきでしょうか?

高いほうがよいと思いますが、目的次第かとは思います。

モチベーションと業績の関係性を定量的に確認することはできますか?

仮定は必要ですが、定量的に分析してみましょう。

 

近年、「エンゲージメント」「従業員満足(Employee Satisfaction)」「従業員ロイヤルティ(eNPS)」などの重要性が指摘されています。

 

 一方、「従業員のモチベーションは気にするべきではない」という主張もみられます。

 

いずれの主張も、実験結果があったり、論理的な説明があるため、「どちらの主張が正しいの?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。

 

そこで今回は、企業の大きな目的である「業績を高める」という観点を軸に
「従業員のモチベーション」と「業績」や「退職」は関係するのか?
という課題を考えてみます。

 

※「組織の未来はエンゲージメントで決まる」の本では、

  • エンゲージメント:主体的・意欲的に取り組んでいる状態(自発的な貢献意欲)
  • 従業員満足度:職場環境や給与、福利厚生などへの満足度
  • モチベーション:行動を起こすための動機
  • ロイヤルティ:組織に対する帰属意識、忠誠心

とされており、「エンゲージメント」と他の3つの言葉は区別されています。 「何を計測しており」「本当に成果に結びつくのか」は、それぞれの診断ごとに分析する必要性を感じています。

 

 すべての従業員の「業績」を数値化する

 「モチベーション」(エンゲージメント)の問題で難しいと感じるのは
それぞれの「業績(成果)」をどのように計測(数値化)するか?
という点です。

 

「業績(成果)」を数値化できる業務であればわかりやすいですが、数値化できない仕事も多いです。

 

そのため、過去の研究事例では、数値化して比較しやすい仕事(例えば「コールセンターの受電数」など)が、「モチベーション」と「業績(成果)」の関係性を分析するために行われてきました。

一方、上記の分析が「汎用的な結論を導けるか?」という点については、検討の余地があると感じています。

 

そこで今回は1つの仮説として複雑な仕事を数値化するために
・チームの業績 = マネージャーの業績評価
という仮定をおいてみます。

※マネージャーの評価は業績(成果)の割合を反映させている会社も多いのである程度、確からしい仮定かなと考えています。

 

「従業員のモチベーション」と「業績」の関係性

 先ほどの仮定に基づき
・チームの「従業員のモチベーション」 = モチベーション点数のチーム平均値
・チームの「業績」= マネージャーの業績評価
という2つの指標の関係性を分析してみます。

 

以下のグラフは、ある企業の102のチーム(マネージャー)に対し、「チームのモチベーションの平均点数」と「マネージャーの平均業績評価」を示したものです。

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結果、
モチベーション平均点数が70以上のチームは、チーム業績が高い可能性がある
(平均点数が70未満のチームは、統計的に優位なチーム業績の差はみられない)
ということがわかりました。

 

「平均点数70以上」は、今回の指標ではかなり低い出現率になるため、上記の結果は
モチベーションが著しく高ければ、業績向上につながる
(逆に、モチベーションがある程度の高さにとどまると、業績貢献まではつながらない)
可能性があることが示唆されました。

 

ただし、今回のチームはほぼすべてがモチベーション点数が全ての会社の平均以上だったため
モチベーションが低いと、業績が下がる可能性がある
点については、検証ができていません。

 

「従業員のモチベーション」と「退職」の関係性

 次に、「業績」の中の「費用」という観点から、「モチベーション」と「退職」の関係性について分析してみます。
別記事の通り「1人が退職すると年収の相当の利益損失」の可能性があるためです。

 

先ほどと同様に、「チームのモチベーションの平均点数」と「退職率(全体平均を1とした時の値)」の関係性をグラフにしました。

 

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結論として、
チームのモチベーションと退職率には、統計的に優位な関係性はない
(モチベーションが低いと退職が増える可能性はあるかもしれない)
という結果になりました。

 

まとめ

 今回、1つの企業のみのデータですが、
・モチベーションが著しく高ければ、業績向上につながる
(逆に、モチベーションがある程度の高さだと、業績貢献まではつながらない)
・チームのモチベーションの高さと、退職率はあまり関係性がない
”可能性がある”ことがわかりました。
(※ただし、「マネージャーの評価」が「チームの業績」に比例すると仮定しており、モチベーションが平均以下のケースは未検証)

 

逆に「従業員のモチベーションは気にするべきではない」という主張は、
一定範囲内のモチベーションの場合、モチベーションの高低と業績に関係性は少ない
という側面をとらえている可能性もあるのかなとも感じております。

 

みなさまの会社では、「モチベーション」(エンゲージメント)をどのように考えられていますか?マネジメントの分析については、まだまだ明らかになっていないことも多いと感じています。ぜひご意見いただけますと幸いです。

 

 

(参考文献)

State of The Global Workplace GALLUP社(「ストレングスファインダー」などを提供)
「エンゲージメントの高いチームは、収益性や生産性が高まる」という結果。
※対象企業は「22 organizations」「45 countries」「1.2M employees」となっており、グローバル展開している大手企業が主な対象になっていると考えられる。

「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果 株式会社リンクアンドモチベーション
「エンゲージメントスコアが高い企業は、翌年の売上/利益の伸びが大きくなる」という結果。

Great Place To Work 研究レポート
「働きがいのある会社(ベストカンパニー)は、売上の対前年伸び率が高い」
「ベストカンパニー10社は、日経平均より投資対リターンの割合が高い」という結果
※「業績」と「働きがい」の因果関係はわからない(「成長」している企業が「働きがい」が高い可能性もある)と記事中に記載あり。 

 

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。