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経営(ヒト・モノ・カネ)に関して定量的な分析を発信する 株式会社トランスのブログ

「SPI」を使うと、どの程度「入社後評価」を予測できるのか?

今回は、
「適性検査(SPI)」を使うと、どの程度「入社後評価」を予測できるのか?
について考えてみます。
※関連記事は「適性検査は「入社後評価」や「退職」を予測できるのか?(まとめ)」よりご覧ください。

※今回の分析では、以下のサイトに掲載されている
若手社員の定着・戦力化実態調査2017から見る、SPIと入社後評価の関係性
のレポートのデータを用います。

 

まとめ

今回は(も?)、データが並ぶので、先にまとめです。

1.「予測」するためには、「平均」でななく「分布」が重要
2.適性検査(SPI)の1項目を使った、入社後評価の予測正解率は35%
  ※適性検査(SPI)の「分布」考慮すると、予測正解率は59%
3.予測精度を高めるには、「自社における分布」を知ることが重要

※SPIは他の適性検査と比較すると、予測を行いやすいテストであると個人的には考えています。

 

それでは、それぞれの内容について、細かく見ていきます

 

1.「予測」するためには、「平均」でななく「分布」が重要

今回は、レポート内で分析されている「上司評価(将来性)」と「SPI」の関係性の中で、「自己尊重性」のデータを例に取り上げてみます。(他の指標でも以下、同様のことが言えます。)

 

レポートでは、
「自己尊重性が高い」ことは、「上司評価(将来性)」について、高く評価される要素
とされています。

確かに、平均を見ると、上司評価の「上位群」は「下位群」と比較して、「自己尊重性が高い」データが提示されています。(統計的有意差あり)

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このデータだけをみると、「自己尊重性が高い」人であれば、「上司評価の高くなる人」を採用できる!ように感じます。

 

次に、「上位群」と「下位群」の分布をみてみます。
※データで提示されている「標準偏差」に従い正規分布に従っていると仮定しています。

 

すると
「上位群」と「下位群」の大部分は重なっている
(=分布でみると、重なっている部分が多く、違いが少ない)
ことがわかります。※「平均」は1つ前の横棒グラフと一緒です。

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このグラフを見ると、上司評価の「上位群(赤)」と「下位群(青)」で「自己尊重性の高さ」に大きな違いはない(=ほぼ重なっている)と感じるかと思います。

 

HR領域で「予測」する場合には、「分布」が重要

次に、「自己尊重性」のスコアを用いると、どの程度、入社後の評価が予測できるかを確認してみます。

 

例として、「自己尊重性」のスコアが60以上を高評価者の【採用基準】にしたと考えます。
※わかりやすさのため、「上位群」と「下位群」が同じ人数だったと仮定しています。

 

「自己尊重性」が60以上の人における「上位群」と「下位群」の割合を調べると、
・「自己尊重性」が60以上の場合、「上位群」の割合が高い(55%
・一方、【基準】を満たす人のうち、45%は「下位群」
であることがわかります。

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このように、「自己尊重性」のスコアを使うと、
「平均に統計的有意差があった」としても「予測はあまりできない」(結局約半分(45%)は「下位層」)
という結果になりました。

 

これは「予測」できるか否かは、上位群と下位群がどのように「分布」しているかによって決まるためです。

例えば、先ほどと同じ「平均」でも、以下のように「分布」している場合、スコアが50以上であれば、「上位群」になる確率は90%以上になります。

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2.適性検査(SPI)の1項目を使った、入社後評価の予測正解率は35%

ここまで、「上位」「下位」の2区分で分析していますが、面接など他の分析結果と比較するために「上位」「中位」「下位」の3区分として、先ほどと同じ分析を行うと、平均正解率は35%((37%+33%+36%)÷3)となりました。

※以下のグラフの緑枠で囲った部分が正解(SPIによる予測と上司評価が一致)

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この正解率35%という数字は前回記事
・1人の面接の正解率:37%
・5人の面接(平均)の正解率:44%
よりも低い数字であることがわかります。

 

3.予測精度を高めるには、「自社の分布」を知ることが重要

ここまで読んでいただいた方は、「適性検査は当たらない?」と感じられた方もいるかもしれません。

 

確かに先ほどのように「平均」を見るだけでは、入社後評価の予測は難しいのですが、「分布」を確認することで、予測精度を高めることが可能です。

 

例えば、以下の企業では、分布に差がある緑枠のついた5つの指標を組み合わせて用いることで、予測正解率を59%((64%+64%+50%)÷3)まで引き上げることができました。

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最後に

今回は、「適性検査(SPI)」を使うと、どの程度「入社後評価」を予測できるのか?というテーマで、「平均」と「分布」の違いを見てきました。

【検証結果(特定条件下)】
・適性検査(SPI・平均のみを考慮):予測正解率35%
・適性検査(SPI・分布も考慮):予測正解率59%
※1人の面接:予測正解率37%
※5人の面接(平均):予測正解率44%

 

「適性検査はあたる」という意見と「適性検査はあたらない」という意見の両方を聞くことがありますが、この差は「使い方」の違いもあるのかもしれません。

 

今回の分析では、SPIを分析してきましたが、今回の内容は他の適性検査のほとんどが当てはまります。
次回記事で紹介しますが、そもそも「統計的有意差すら”ない”テスト」や「低評価者の方がスコアが高いテスト」も多いため、SPIについては、入社後評価を予測しやすいテストと考えています。

 

みなさまの会社では、どのように適性検査を使われていますか?ぜひご意見いただけますと幸いです。

 

 

※執筆者:塚本鋭

東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。