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経営(ヒト・モノ・カネ)に関して定量的な分析を発信する 株式会社トランスのブログ

勤怠データから「退職しそうな人」を予測できるか?

今回は、企業の実データをもとに
勤怠データから退職しそうな人を予測できるか?
という課題について考えてみます。

 ※関連記事は「退職(予測)に関するデータ分析結果(まとめ)」よりご覧ください。

 

「勤怠データ」から「退職しそうな人」を予測できるか?

 

従業員が「退職」してしまうと、企業にとっては大きな利益損失につながります。
前回記事の通り「1人の退職で年収相当の利益を損失している」可能性があります。

 

そこで、「退職しそうな人」を事前に予測し、認識のズレを補正したり、サポートを手厚くすることで、退職を防ぐ試みがいろいろと行われています。

 

今回はその中でも、「従業員の勤怠データ」から「退職しそうな人」を予測できるか分析してみます。

 

「勤怠データ」における「退職者」の特徴分析

 まずは、「退職者」について「勤怠データ」に特徴があるか?を確認してみます。以下のグラフは、「退職」直前までの、退職者の「総労働時間の平均」のデータです。

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今回の企業においては、
退職者」は「退職5か月前」に過去の平均総労働時間の最低値(13か月前)を下回る
ことがわかります。
※「1~2か月前」になると、有給消化なども含んだ結果になります。

 

そのため、
「退職者」は退職前に労働時間が減る傾向がある
ということがいえます。

 

「勤怠データ」における「退職者」を予測できる?

 次に、「勤怠データ」について「機械学習」を行い、「退職の予測」ができるか確認してみます。


予測するためのデータとして、
「労働時間」「休み回数」「早退回数」「遅刻回数」「休み明け遅刻回数」「出社時間」「退社時間」
を使用しました。
※ただし、「退職前1~3か月」のデータは、退職がすでに確定してしまっており、打ち手につなげられない可能性があるため、「退職前4か月以前」のデータのみを使用します。

 

約300人に対して、機械学習(AI)を行い、予測結果と実際の結果を以下の表にまとめました。(以降の数字は合計300人となるように丸めています)

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上記では、
・「退職」と「在職」の正解率は88%((1人+262人)/300人)
ですが、
・実際に退職した36人中1人しか、退職を予測できていない
結果となっており、未来予測としてはほとんど意味がない結果となりました。

 

次に、退職を予測できる人数が増えるように、機械学習の内容を調整して、再度分析をしてみます。

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結果、
・退職者37人中8人の予測はできた
一方で、
・「退職と予測」した65人中、「実際に退職」した人は8人
しかおらず、実際の利用を考えると、ほぼ使えない結果になってしまいました。

 

結論として、
(今回の分析では)「勤怠データ」から「退職」を予測できない
という結果になりました。

 

まとめ

 今回、
「退職者」の「勤怠データ」には傾向がある
 ※「退職前に労働時間が減少する」など
ただし、その特徴だけでは(今回の分析では)未来予測はできない
という結論になりました。

 

データ分析をしていると「統計的に傾向(=有意差)がある」場合でも、「未来予測ができない」ことも多いです。

※例えば、1000人の会社で退職率10%(100人)の場合、退職者100人の20%(20人)、在職者900人の10%(90人)が【特徴X】である場合、統計的に【退職者は特徴Xを持っている傾向】がありますが、【特徴Xを持つ110人(20人+90人)の中から、退職者(20人)を見つけることは難しい】となります。

 

もちろん「特徴」はあるため、機械学習アルゴリズムを工夫することで、未来予測できる可能性はゼロではないと考えています。

 

もし「勤怠データ」から「退職の未来予測」でよい結果が得られている方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見を頂けますと嬉しく思います。

 

※以下の記事では、「退職の未来予測」が一定できた分析内容を紹介しています。

 

 

 

※執筆者:塚本鋭

 東京大学・大学院において、複雑ネットワークや大規模シミュレーションに関する研究に従事。人工知能学会研究会優秀賞・東京大学工学系研究科長賞 等を受賞。 大学院修了後、株式会社野村総合研究所コンサルタントとして入社し、ICT・メディア領域を担当。2013年1月より株式会社クラウドワークスに8番目の社員として参画し、2014年12月に上場を経験。データ分析・産官学連携を軸としながら、B2B事業立ち上げ、カスタマーサポート部門立ち上げ、子会社副社長等を歴任。2018年より現職。